加工の違いから見る鉄フライパン
こんにちは、鐵兎堂 -TETTODO- のスタッフTです。
鐵兎堂の実店舗でお店番をしていると、鉄フライパンをお探しのお客様から
「鉄フライパンを使ってみたいんだけど、どれを選べばいいですか?」
さらにお話が進むと、大体
「鉄フライパンの加工の違い」について聞かれることが結構多いです。
鉄のフライパンも日進月歩で、様々な種類が増えてくる中、
わたしを含め、当店スタッフもメーカーさんやフライパン長老(オーナー)に話を聞きながら、知識を蓄え、お客様にもしっかりとお伝えできるようにしています。
そんなことで、
今回はちょっとだけ鉄フライパンの裏側へ。
難しいことはできるだけ抜きにして、
鉄フライパンの「作られ方」と「表面加工」の違いのお話をしたいと思います。
鉄フライパンはこう作られる
鉄フライパンの作り方を大きく分けると、溶かした鉄から作る「鋳物」と、鉄の板を成形して作る「鋼板タイプ」があります。
同じ鉄でも、作り方が変われば重さや厚み、見た目まで変わってくるんです。
タイプ① 鋳物タイプ

高温で溶かした鉄を「鋳型(いがた)」と呼ばれる型に流し、固めて成形する製法です。
岩手県の南部鉄器や、アメリカのLODGE(ロッジ)などに代表される昔ながらの作り方ですね。
ハンドルまで一体で作られているものも多く、表面には鋳型による独特のザラザラとした質感があります。
鋳鉄製のフライパンは比較的厚みと重量があるものが多く、その分、一度温まると熱をしっかりと蓄えてくれる蓄熱性の高さが特徴です。
ステーキやハンバーグなど、
「しっかり焼き目をつけたい」料理にも向いています。
但し、毎日サッと取り出して片手で振るには少し重たく感じることも...。
それでもこの重厚感も含めて楽しめるのが、鋳物フライパンの魅力です。
タイプ② 鋼板タイプ

こちらは、鉄の板を加工してフライパンの形を作るタイプです。
たぶん皆さんがよく見かける鉄フライパンの多くが鋼板を加工している、このタイプだと思います。
ただし、一枚の鉄板から”どうやってフライパンの形にするか”によって、さらに作り方が分かれます。
・プレス加工

切り出した鋼板に大きな圧力を加え、金型に押し当ててフライパンの形に成形する方法です。
短時間で均一な形状を作りやすいため、量産にも向いています。
毎日の家庭料理に使いやすい鉄フライパンにも多く採用されている製法です。
・スピニング加工&ヘラ絞り加工

円形に切り出した鉄板を回転させながら、ローラーやヘラを押し当て、少しずつフライパンの形に成形していく方法です。
「ヘラ絞り」や「スピニング加工」と呼ばれます。
職人さんが手作業でヘラを当てながら形を整えるものもあれば、現在では機械制御によって加工するものもあります。
一気に型へ押し込むプレス加工とは違い、回転させながら少しずつ成形していくのが特徴。
スピニング加工の場合はフライパンの側面を削り、軽量化できるのも利点の一つ。加工跡が見える製品もあります。
手作業の場合は職人の感覚で細かな調整がしやすく、少量生産や特殊な形状にも対応しやすい製法です。
・鍛造・打ち出し

こちらはハンマーなどで鉄を叩きながら形を作っていく製法です。
熱した鉄を叩いて成形するものや、冷たいままの鋼板を叩きながら形を整えていく「打ち出し」などの製法もあります。
一枚の鉄から作られるturk(ターク)のクラシックシリーズなどが代表的ですが、表面には叩いた跡や職人の手仕事が残り、一枚一枚わずかに表情が違うのも魅力。
ピカピカに整った工業製品とはまた違った、無骨で”ザ・道具”という雰囲気があります。
「せっかく鉄フライパンを買うなら、道具として長く育てていきたい」
そんな人には、このロマンはたまりません。
錆びやすさを克服するには...
いろいろな素材・表面加工をご紹介。
※表面加工別の製品リンクは最下部にございます。
鉄フライパンを使ってみたいけれど、
「サビそうで心配」
「お手入れが大変そう」
という声は、店頭でも本当によく聞きます。
確かに鉄は、そのままでは水分や湿気によってサビやすい素材です。
それでも現在の鉄フライパンでは、サビにくくしたり、使い始めを簡単にしたりするために、さまざまな素材や表面処理が採用されています。
表面加工① 窒化処理

鉄の表面に特殊な熱処理を施し、「窒化層」と呼ばれる硬い層を形成する加工です。
表面が硬くなり、一般的な鉄に比べてサビや摩耗にも強くなるのが特徴です。
代表的なのが「リバーライト 極」シリーズなど。
一般的な鉄フライパンでは、
「使用後に油を薄く塗って保管する」
といったお手入れを推奨されることがありますが、窒化処理された製品の中には、洗ったあと水気を拭き取るだけで保管できるものもあります。※お手入れ方法はメーカー・製品によって異なります。
ここで大切なのが、窒化処理はフッ素樹脂などを鉄の表面に塗った「コーティング」とは違うということ。
鉄そのものの表面を熱処理によって変化させています。
そのため、一般的な樹脂コーティングのように「使っているうちに表面の膜がめくれてくる」といったものではありません。
「鉄フライパンには興味がある。でも、お手入れのハードルはなるべく下げたい」
という方、鉄を初めて使うという方には、かなり選びやすいタイプだと思います。
表面加工② ハードテンパー加工

藤田金属さんのフライパンでおなじみの加工方法。
鉄製フライパンを約700℃の高温で焼き入れし、その後あらかじめ油をなじませて仕上げています。
鉄フライパンでは、購入後の最初に「油ならし」と呼ばれる作業が必要なものがありますが、ハードテンパー加工された製品はその工程が不要。
届いたら洗って、すぐに料理を始められます。
「鉄は初めてだから、最初の準備で失敗したくない」
という人にとって、この気軽さは大きなポイントかなと思います。
表面加工③ シリコン樹脂塗装

鉄の表面にシリコン樹脂を塗り、出荷後のサビを防ぐ方法です。
シリコン樹脂塗装された鉄フライパンの多くは、塗装を焼き切るための「空焼き」は必要ありません。
そのまま使い始め、調理を繰り返していくことで塗装が少しずつ摩耗し、その頃には鉄の表面にも油がなじんでいきます。
ambaiの卵焼きなどに使用されているシリコン塗装は食品衛生法に適合した塗装を採用しているため、口に入れても大丈夫な素材を採用しています。
※ただし、シリコン樹脂塗装の仕様や使用方法はメーカーによって異なるので、使用前には必ず商品説明や取扱説明書を確認してください。
表面加工④ クリアラッカー塗装

製造してからお客様の手元に届くまでの間、鉄がサビるのを防ぐために透明な塗装を施したものです。
昔ながらの鉄フライパンでは比較的よく見られる方法ですね。
製品によっては、最初に火へかけて塗装を焼き切る「空焼き」が必要になります。
ここで注意したいのが、
「鉄フライパン=最初に必ず空焼きする」ではない
ということ。
シリコン樹脂塗装や窒化処理、ブルーテンパー加工など、空焼きの必要のない製品もあります。
鉄フライパンを購入する前に表面加工をチェックするのも、
楽しいかもしれませんね。
さらに「くっつきにくさ」を考えた加工も
鉄フライパンというと、
「サビるかどうか」
が気になるポイントですが、もうひとつ気になるのが、
「料理がくっつかないか」
ですよね。
そこで鉄の表面そのものに工夫を施しているフライパンもあります。
代表的なのが、
・エンボス加工
・ファイバーライン加工
・ブラスト加工
・エッチング加工
などです。

鉄の表面に細かな凹凸や溝を作り、
食材との接触面積を減らすことでくっつきにくくしたり、
油がなじみやすくなります。
もちろん、
「この加工があるから絶対にくっつかない!」
というわけではありません。
鉄フライパンは予熱や油の量によっても仕上がりが大きく変わりますので、参考までに。
考えると各メーカーがより扱いやすい鉄フライパンを目指して、
日々、さまざまな工夫をしている。
なんだか、胸が熱くなります…。
さいごに
ここまでいろいろな加工方法をご紹介してきましたが、
鉄フライパンは、加工だけで使いやすさが決まるわけではありません。
実際に料理をするときに大切なのは、
「予熱」「油の量」「食材を触るタイミング」。
こういう風に書くと、「やっぱり鉄ってむずかしいんじゃん!」と思われがちですが、
正直、これは「慣れ」だと思います。
何度か調理を一緒にしていくうちにくっつきにくく調理する感じだとか
お手入れのコツなどが見えてくると思います。
使っていくうちに油もなじんでいきますし。
今回ご紹介した成形方法や表面加工の違いも、
「どれが一番なのか」を決めるためというより、
自分に合いそうな鉄フライパンを探すときの、ひとつの参考にしてもらえたらと思います。
ご購入前のご相談やご購入後のお手入れやお悩みも鐵兎堂にお問合せいただけますし、
公式のYouTubeでも使い方のご紹介も発信しておりますので、こちらも合わせて活用してもらえたらうれしいです。
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